夏空15


確かに弥生は年中入退院を繰り返していて、夏休みも大半は病院にいるが、でも、一度も行ったことがなかったなんて……。

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「ウチ、どういうわけかいっつもお祭りの日に入院の日が重なったり、体調が悪くなったりして、一回もお祭り行ったことなかったやん。美代ちゃん、忘れてしもたんか?」
「ご、ごめん、それは本当に知らなかったわ。というか、気づかなかった」
「もー、ひどいなあ。ウチのコンプレックスなんやで、いいや、トラウマや、トラウマ」
「ご、ごめんごめん。これは本当にあたしが悪かったわ。気づかなくてごめんなさい」
「もー」

 どうやら弥生は本気で怒っている(傷ついている?)ようだったので、あたしは一生懸命謝った。
 とりつくろうように言う。

「ほ、ほら、だったらさ、確かこの町でもうすぐお祭りがあるって言ってたじゃない。それを一緒に観に行こうよ、ね」

 あたしは半ば思いつきで言ったのだが、弥生の反応は予想以上に良かった。

「ほんま? わーい、やったー!」

 どうやら本当にお祭りに行きたかったらしい。あたしはほっとする半面、ちょっと申し訳ない気持ちにもなった。弥生の気持ちにちっとも気づいてあげられなかった。

「えへへー、ついにウチもお祭りデビューかー」
「こらこら、浮かれるのは早いわよ。この旅の本当の目的を忘れたの?」

 あたしは罪悪感から目を逸らしたい気持ちも手伝って、話題を変えた。

「もちろん覚えとるでー。ウチの親捜しや」
「そゆこと。なんとなく勢いでここまで来ちゃったけど、そもそもアテはあるの? いくらなんでもやみくもに探したって見つからないわよ」

 それを聞くと、弥生は意味ありげな笑みを浮かべた。

「んっふっふー。美代ちゃん、ウチを甘く見んといて欲しいなー」
「なによ。どういう意味?」
「じゃーん。これや、これ」

 弥生は自分のカバンのなかから、謎のファイルケースを取り出した。

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「なにこれ?」
「ウチの親を探し出すための重要情報をスクラップしたファイルや。インターネットで昔の新聞記事を調べてなー、それっぽいのを集めといたんや。どうや美代ちゃん、ウチ、すごいやろ」
「お、おおー、それは確かにすごいわね……まさか、あの怠けものでズボラなアンタがネットで調べ物までするなんて……」

 あたしは驚きと感心で目を丸くしながら、弥生の造ったファイルケースを受け取った。
 が、手に取った瞬間に言った。

「って、軽っ!」

 それはびっくりするぐらいに軽かった。
 開いてみると、案の定、そこには二・三枚の新聞記事が挟んであるだけだった。
 弥生が照れたように言う。

「いやー、やっぱ素人が調べたって大したものは見つからんみたいや。一時間くらいネットサーフィンしたらユー○ューブのお笑い動画に行ってもーた」
「あんたねー……」

 そんなこったろうと思った。

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