「でも美代ちゃん、諦めるのはまだ早いで。そのファイルだけでもウチの親を探す重要なヒントになるんや。なかの記事見てみー」
「んん? どれどれ……」
あたしはファイリングされている数枚の新聞記事に目を通した。
それはあたしや弥生が生まれた年の新聞だった。日付は八月二十日となっているので、約十六年前だ。ただし問題の記事と思われる蛍光ペンで囲った部分は、どれも紙面三分の一くらいの中程度の扱いでしかなかった。
『山頂に新生児遺棄。
今月二十日早朝、○○県○○市白海町にある狗堂山山頂に新生児が置き去りにされているのを、近くに住む黒田徳子さん(五十一)が発見した。近くに両親らしき人物の姿はなく、警察では捨て子の可能性が高いと見て捜査を開始している』
「これって……もしかして、この新生児があんたってこと?」
「そういうこっちゃ。断言は出来へんけど、まず間違いないと思うで」
「なんでそんなことが言い切れるのよ」
「前に施設の院長先生に聞いたことがあるって言うたやろ? そのとき聞いたのが『ウチは白海って町で、山に捨てられてた』ってことだったんや。白海で検索して出て来たのはここだけやったし、山に捨て子なんてめったにないから、まず間違いないと思うねん。それにこの日付」
「これって、あんたの誕生日と同じよね」
弥生の誕生日は八月二十日だ。
「そうや。これが何よりの証拠やで。ウチが拾われた日を誕生日にしたって、院長も前に言うてたからな」
「なるほど。じゃあこの子があんただってことは、まず間違いないでしょうね」
あたしは納得したものの、すぐに当然の疑問が頭に浮かんだ。
「でもさ、結局アンタは施設に入ったんだから、警察は親を見つけられなかったってことなんでしょう? 警察が捜査してもダメだったのをあたしたちだけで見つけられるかしら」
「ふっふっふ。美代ちゃん、心配することあらへんで。ウチらには警察も持ってなかったとっておきの手掛かりがあるんやから」
「とっておきの手掛かり?」
「ふっふっふ。これや。ここにいる超絶美少女や」
弥生は人差し指を自分に向けた。
あたしは辺りを見回した。
「どこにいるの? 超絶美少女」
「ウチや、ウチ! ひどいなぁ」
「いやいや、今のはあたしのリアクションこそが正解だったと思うわよ」
あたしは正直に言った。
「んで、冗談はさておき、とっておきの手掛かりってのは何のことなのよ」
「だから、ウチのことやってば」
「なんでアンタが手掛かりなのよ」
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