夏空 19

 第二話 こちら弥生探偵団、出張中!

 翌朝。旅の二日目。

 あたしが目を覚ましたとき、弥生はまだ隣で眠っていた。
 携帯を見ると七時五十分。もう少し寝かせてあげたい気もするが、朝ご飯が確か八時だったので、起こさないわけにはいかない。

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「弥生、朝よ。起きて」

 ゆさゆさと弥生の細い肩を揺らす。
 なんだか本当に弥生のお母さんになってしまったみたいで、ちょっとだけ照れた。

「うーん、お母さん、あと五分だけ寝かせてや」
「誰がお母さんか。というかあんた、目、覚めてんでしょ」
「へへー、バレたか」

 弥生は悪戯っ子のように小さく舌を出し、ゆっくりと身体を起こした。

「お、おお……?」

 が、その途中でふにゃりと力が抜け、自分の膝に額を押し付けるように身体を折り曲げたまま、動かなくなる。

「うう……力が入らへん」
「ちょっと、大丈夫なの? 薬、飲む?」
「ただの貧血や。昨日よく眠れへんかったからなー」
「それって、怖い夢見たとかっていうアレのせい?」
「うん。オバケの大行列やった。そのなかにもったいないオバケが混じってたのをウチは確かに見た」
「またローカルネタを……ふざけてないで、ちゃんと答えなさい。薬、飲んだ方がいいの? それとも、今日は親捜しはやめて、ここで休んでる?」

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 弥生は発作が出たときや、他人に迷惑をかけてしまっていると感じたとき、わざと冗談を言ってはぐらかす悪い癖がある。自分の負い目やコンプレックスをそうやって誤魔化しているのだ。

 弥生はこう見えて、意外とプライドが高いのだ。そして強情っぱりなのである。

 しかし、長い付き合いのあたしには通用しない。

 ときには厳しく言ってあげることもまた友情なのだから。

 あたしのそんな性格が分かっているからか、弥生は素直に答えた。

「大丈夫や。たぶん薬飲めば治る。美代ちゃん、ウチのカバン持ってきてくれるかな。あと水もくれると嬉しい」
「分かった」

 あたしは部屋の隅から弥生のカバンを取って来て、弥生に手渡した。水はこんなときのために常備しているペットボトルの飲料水を渡す。

 弥生はカバンのなかに手を入れ、ごそごそと作業を始めた。

 てっきり薬袋を探しているのかと思ったが、パキ、という音が聞こえたので、そうではないと気づいた。
弥生はカバンのなかに手を入れたまま、必要な薬を取り出そうとしていたのだ。

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