夏空 45


 あたしはいつも通りの軽口を叩いたものの、内心ではホッとしていた。

 良かった。これで、弥生をお祭りに連れて行ってあげられる。

スポンサーリンク

「よーし、というわけで美代ちゃん、さっそく出発しようや。ウチ、もう我慢出来へん」
「ちょーっと待った。その前に、あんたにプレゼントがあるのよ」
「プレゼント?」
「ふっふっふ。一日早いんだけどね。あたしからの誕生日プレゼント。さあ、開けてみて」

 あたしは用意しておいた紙袋をカバンから取り出し、弥生に手渡した。

 弥生は不思議そうになかのものを取り出すと、目を輝かせて歓声を上げた。

「わー、浴衣やー!」

 そう。

 それはあの和服屋で買っておいた、弥生用の浴衣だった。

 水色の地にひまわりの花の模様のついた、夏の空をイメージさせるデザインだ。

 弥生に合うと思ったので、即決で選んで来たのだ。

 ちなみにあたしのは、紫によく分からない花の模様の浴衣である。これもこれでかわいいので、あたしとしては気にいっている。

スポンサーリンク

 弥生は目を輝かせて、

「ありがとう、美代ちゃん! 今すぐ着てもええか?」
「もちろん」
「やったー!」

 弥生は子供のようにはしゃぎながら、浴衣に着替えた。

 着替え終わってから、嬉しそうにお披露目をする。

「えへへ、どうや、美代ちゃん。似合ってるかー?」
「もちろん。ばっちり似合ってるわよ」
「えへへ。美代ちゃんもめっちゃ似合ってるで」
「ありがと。さ、そろそろ行きましょうか」
「うん!」

 弥生はあたしと手を繋ぎ、甘えるように笑った。

「ウチ、こんなに嬉しい気持ちになったの初めてや。最高の誕生日プレゼントや!」

 その言葉を聞いているあたしの方が、嬉しくなってしまった。

 それから、あたしたちはバスに乗り、例の神社へと向かった。

「うわー! すっごいたくさんひとがおるなー!」

 神社のある高台の周囲は、祭りを楽しむ人々でごった返していた。

 神社だけでなく高台の周囲にも出店が出ているので、石段から大分離れているこの辺りでも、祭りのお囃子が聞こえてくる。

 陽は大分前に沈み、辺りを宵闇が包んでいる。

 そのなかでぼんやりと光る、提灯の明かりが、石段の先に向かって真っ直ぐに並んでいる。

 それはどこか幻想的で、懐かしく、不思議な感動を呼び起こす光景だった。

「うわあ……美代ちゃん、早く行ってみようや!」

 弥生はもう我慢が出来ないといった感じで、あたしの手を引いて催促する。

スポンサーリンク

前へ 次へ 作品一覧へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA