怒らないで!プラスイメージで叱って教える

怒らないで!プラスイメージで叱って教える


「怒るのではなく叱る」ということは子育てでも、会社などでも言われています。
しかし、どういう態度や言葉が「怒る」で、どういう態度や言葉が「叱る」なのでしょうか。「叱る」意味とはなんでしょう。
その違いは、どこにあるのでしょうか。
自分の言ったことをきかなかった相手(子ども)に対して、自分が感情的になってしまったらどうしたらよいのでしょう。
基本的には子どものために注意をしたいのですが、どのように伝えればよいのでしょう。
大人の伝えたいことを正確に子どもに伝える、その伝え方も大切なのです。

「怒る」は自分の感情をぶつけるもの「叱る」は相手へのアドバイス


「怒る」と「叱る」は似ている言葉なので、使う時も間違えてしまいがちです。
しかし「怒る」と「叱る」は全く異なるものなのです。

「怒る」は自分自身の感情で、辞書では『不満・不快なことがあって、がまんできない気持ちを表す。腹を立てる。』と載っています。
一方「叱る」は『目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる』とあります。
つまり「怒る」は「不満・がまんできない」という感情であり、「叱る」は「よくない点を指摘」する理性的なものなのです。
参考:goo辞書 https://dictionary.goo.ne.jp/

「怒る」と「叱る」の違いは感情が含まれているかどうか

「怒る」と「叱る」の違いを簡単にいうと「感情」が含まれているかどうかということになります。
「怒る」という感情は「自分のために」自分から発しています。イライラを自分から相手にぶつけるのです。
「叱る」は感情ではなく「相手のために」アドバイスや注意点を与えます。
ここで既に、感情が入るか否かだけでなく、自分のためか相手のためかという違いも分かってきます。

ただし、相当に酷くやらかしてしまった場合は、強く咎めなければならないため、強い言葉で、時には大切なことは大きな声で繰り返し言い聞かせることもあります。
これが「叱る」という言動なのに、相手が「怒っている」という誤解を生じさせるのです。

怒る原因は感情のコントロール力が必要

「何度言っても同じことを繰り返している」という状態が、子どもに対してイライラする「怒る」原因の大半のようです。
「前回叱った時から学んでいない。自分の話を聞いていなかったのでは?」という推測や、他人の目がある場合は「躾がなってないと思われて(自分が)恥ずかしい」という体裁などの背景も想像できます。
この「怒る」感情が止められず、繰り返しながらエスカレートすると、子どもへの虐待や殺害などの悲劇的結末を引き起こす原因になっていきます。

教育や育児には「怒る」という感情コントロールの力が必要なのです。

怒ることは相手との相互理解を妨げてしまう

教育する上でよく言われるのが「褒めて伸ばす」です。
これで伸びる子供はとても多いですね。ただ、褒める側にある程度の忍耐が必要ですね。

実はこの「褒める」だけでは子供の心に届きにくく、信頼関係が薄い物になってしまう可能性があります。
「誰しも道を踏み外さない」ということはあり得ないので、軌道を間違えた場合には「きちんと叱って」軌道修正に導く必要があります。
自分を正しい道に引き戻してくれたということが、信頼感へ繋がっていくこともあります
「褒める」「叱る」を上手に使って信頼関係を良いものにしましょう。

一方「怒る」ことは感情的になって、相手と繋がっていた信頼関係の「糸」を断ち切ってしまい、相互理解を妨げてしまいます。
怒ってしまった「理由や原因」という大切なメッセージが伝わらず、「怒られた」ということだけが印象に残ってしまいます。

「叱る」を上手に使って子どもとの信頼関係と相互理解を築きます。

感情をコントロールするために自分自身のループを断ち切る

どうしたらこの「怒り」の感情をコントロールできるのでしょうか。

感情は「こういう事象の時」に「こういう反応」をするという心の癖に近いです。
癖と言うのは「嘘をつくと、いつの間にか鼻の穴がふくらんでいる」みたいな感じで、無意識で反射的に言動に反映しています。

つまり、この癖を自覚することで「怒りの癖ループ」から抜けられる可能性があります。とても難しいように感じますが、実は怒りのピークは6秒と言われているので、この6秒をやりすごすことができれば、怒りの感情が重症化していかなくなっていくでしょう。

もちろん、意識して少しずつ癖を直していくので、即効性はあまりないかもしれません。
それでも「怒り」を感じ始めた時点で、まずは数回深呼吸して自分の呼吸を整え、心を落ち着かせるキーワードを唱えたりしてみます。「大丈夫」「気にしない気にしない」などあらかじめ決めておきましょう。

怒りのループにハマりやすい人の特徴
・正義感が強い人
・好き嫌いがはっきりしている人
・こだわりが強い人。

感情をコントロールするために自分自身の態度を変える

心と体は表裏一体で、体が変われば心も変わっていく可能性があります。
笑顔で微笑んでいると、心も軽やかで朗らかになっていく傾向があります。
感情をコントロールする方法としては一番試しやすいところです。

具体的には、まずは声のトーンを変えてみましょう。
声のトーンというのは感情を表現するのに大切な要素です。
例えば泣いている赤ちゃんをあやすのに、低い声であやさず、反射的に高い声でテンションを上げてあやそうとします。
逆に、人が人を脅すような時は、低い声でボソッとつぶやきます。

自分の感情的には低い声で怒りたいところですが、ここは声も冷静で心も落ち着かせていきましょう。
「あ、今自分は怒りそう」と思ったら、口の口角をあげ、深呼吸をして、冷静な声のトーンで話してみましょう。

「怒る」をガマンすると噴火してしまう

親が言うことをきかない子供にたいして、感情を我慢し続ければよいのでしょうか? それが解決策なのでしょうか。

親も聖人君子ではないので、そんなにパーフェクトではありません。
感情は、特に怒りは強い感情なので、感情という箱の中に押し込んで蓋をしても、大噴火をしかねません。
大噴火してしまう親の心も疲弊しますが、蓋を開けたら色々な事柄がウワッと出てきてグチャグチャ。怒られている子どもは、もっと大混乱です。

怒りという感情は、人によって噴火までの道のりが違うものです。
よく「瞬間湯沸かし器」と言われるような瞬時に怒りが沸騰!という人もあれば、我慢に我慢を積み重ねて噴火する人もいます。

怒りの度合いと様子
0度=優しく諭すように「これはやめようね」と促す感じ
1度=少し強めに「この前も言ったけど、これはダメなのよ」と再び諭す
2度=1度をさらに強く言う
3度=イライラで頭に血が上ってしまうのが自分で分かる「ダメだっていったでしょ!」我慢しなくてはと自分を抑えることがまだできる。
4度=イライラが抑えられなくなるのが自分で分かる(手が出たらまずい)と思う
5度=怒り爆発。ダメ出しのオンパレードで過去のことも引き出して現在までを叱責。
この時点で手が出てしまう人も。

怒りの感情に任せて怒るのはよくありません。
もちろんウッカリでも手が出たり暴力につながってはいけません。
しかし・・・
怒りの気持ちを我慢してフタをし続けていると、いつか噴火してしまいます。

正しい叱り方のポイント

怒りの感情は我慢し続けていると、我慢という蓋を吹き飛ばして噴火してしまいます。
そこで、噴火する前に「きちんと叱る」ということをしてみましょう。

すでに怒りの度合いが来ている方は、叱り方を一気に身につけようとすると気持ちに負担があるかもしれません。
そこでポイントを踏まえながら少しずつ実践してみましょう

ゆっくり噛み砕くように話す

「叱る」ということは、子どもに叱る内容を分かってもらわなければ意味がありません。
叱る事象が起きた場合に、もし自分が感情的になりやすいのであれば、一回深呼吸しましょう。

子どもにわかるようにゆっくり話します。
勢いで叱ってしまうと、感情的になりやすく早口になってしまいがちです。
子どもはその場の事象がショックだった場合などは特に、言葉が入りにくい場合があるので、手をとるなどしながらゆっくり話してあげましょう。

内容はわかりやすく、噛み砕いて伝えます。

その場ですぐに話す

「叱る」内容というのは、その場ですぐに叱ります。
事象が起きてから時間が経てばたつほど、子どもは自分のしたことと、現在自分が叱られている内容が曖昧になっていきます。

自分がしたこと=叱られている内容
その場ですぐ、目の前の事を叱ります。時間が短ければ短いほど強く印象に残ります。

短くシンプルに話す

学校の行事の初めに校長先生などが長く話をすると、大抵の生徒が話の内容を覚えていなかったりします。
子どもの集中力というのは長くは続きませんし、長い話の理解力もまだ育っていません。
叱られている最中も、あまり長い話になってしまうと本来の叱っている内容がぼやけてきます。
叱っている内容を理解して印象に強くとどめて欲しい時は、短くシンプルに話をしましょう。

目を見て低い声で話す

小さな子供をあやす場合は高い声でテンションを上げます。
例えば「高い高い!」と抱っこして持ち上げて遊ぶに、自然に高い声になっていると思います。

一方、犬などの動物は自分が本気だと示し威嚇している場合には、目をそらさず「低い声」で唸ってきます。
人間もやはり動物と同じく「本気だ」ということを伝えるのには目を見て、低い声で言い聞かせることが有効です。

余計なことを持ち出さない

今叱っていることの他に「この前もこんなことがあったし、あんなことがあったし・・・」と過去のことまで持ち出すと、今真剣に叱っていることの印象がぼやけてきます。
余計なことは持ち出さず、今、その子供の行動のみを叱りましょう

人格は否定しない

子どもに対して、または社会人になってからもパワハラとしてありがちですが、叱っていることにプラスしてその人間の人格まで否定してしまうことがあります。
これは、叱る側が話しているうちに段々とエスカレートしてくる場合に起こりやすいのです。

子どもは大人にとって困った行動が多いかもしれませんが、「悪いことをした」というだけで「悪い子ども」ではありません。
子どもは「悪い子ども」と親に言われることで自己肯定感を知らずに傷つけてしまいます。
ポジティブにしっかり伝えるべきことを伝えましょう。

感情的に怒ってしまった時は素直に謝ろう


「つい感情的に怒ってしまった」という場合、親の方も自己嫌悪感に陥ってしまいます。

「叱っていたのに、親が謝るというのは示しがつかないか?」
という心配はありません。
「感情的になって傷つけてしまった」「理不尽な怒り方をした」と感じたら、なるべく早く「ごめんね」と謝りましょう。

子どもの傷ついた気持ちを癒すと同時に、親の気持ちもリセットすることができます。
子どもの「出来る事」を上げて褒めてあげたりして、自己肯定感を上げてあげるのも有効な対処法です。
決して親子だから傷つけても分かりあえるから大丈夫、というわけでないのです。

怒りすぎても自分を責めないで

「怒らず冷静に叱って」といっても中々上手くいかないケースは多いものです。
「こんなこと言うつもりはなかったのに。頭ごなしに怒ってしまった」と自己嫌悪になってしまいます。
良い親でなければという真面目な方ほど、怒った後に自分を責めてしまいがちです。
親子だからこそ、子どもをギュッと抱きしめて、子どもを嫌いで怒ったわけではないことを伝えてあげましょう。

時間をあけて反省して謝れば子供も真似をする

最近、大人でも謝れない人が多いように感じます。自分の非を認められなかったり、自分の保身にばかり回ったり。

「間違っていた。あまりにも感情的だった。謝れば良かった」と思ったら、その時に修正をすればよいのです。
怒った直後ではまだ頭に血が上っていて「すぐには・・・」という場合は、時間をあけて反省して謝ればよいのです。
この「反省して謝る」という姿は親子関係にマイナスではなく、子どもは「謝る」ということを知って真似をするでしょう。

叱るときのNGワード


ついつい叱る時に使ってしまいがちなNGワードとシチュエーションをピックアップしてみました。

NGワード
・過去を引き出す=「いつもダメダメ」「毎回同じことばかりする」「あの時もこの時も馬鹿なことばかりしている」
・叱る範囲の無限拡大=「何をやらせてもダメ」「言うこと何も聞いていない」
・全体否定=「ダメな子!」「とても悪い子」「生まなければよかった」

自分で言った言葉によって怒りがさらに爆発して、止まらなくなってしまいます。
自己肯定感が傷ついたまま、長々とその状態に子どもが晒されているのは避けたいところです。

プラスのイメージで叱って教える


感情的な「怒る」という言動と違い、叱るということは「教える」ための言動です。

これから先の子どもの人生の中で、同じような間違いがないよう「教える」ためです。
命の危険、または他人に迷惑をかけるなどで、諭しただけでは身につかないかもしれない。という時などは脳に強い印象を与えると共に記憶にきちんと残るように強く「叱る」のです。

ここで厳しく感情的に怒ってしまうと、「何度怒ってもダメだ」「何をやらせてもダメな子だ」などとマイナスイメージと共に子供にインプットされてしまいます。
ここはプラスイメージで必要なことを教えるように叱りましょう。

怒り方によっては後々ダメージが!


「子どもが繰り返し悪い事をするので、その度に感情的になって怒る」
もちろんその場の空気もお互いの気持ちもダメージ大です。
しかし「怒る」ということは、その場のダメージだけではないのです。
子どもを攻撃するような言葉は、子どもの自己肯定感や自己効力感にダメージを与えます。自信のない子ども・自分の可能性を信じられない子どもになっていくのです。
同時に、その親の言動を通して「困ったら親のように怒鳴ったりすれば解決する」と学んでしまい、子供の未来の人間関係にも影響を及ぼす可能性があります。
子どもは幼いほど大人の真似をしやすいものです。
良い叱り方で、問題解決能力を学んでもらえる場にしたいところです。

ヒグマを叱る男の話


「ヒグマを叱る男」というドキュメンタリーがありました。
北海道でヒグマの被害防止に駆除をすることになった折のお話です。

このドキュメンタリーに登場する漁師の大瀬さんは、仕事中にヒグマに音もなく近づかれてしまいます。
大変危険な状況ですが、大瀬さんはヒグマに「コラー!来るな!」と叱ったそうです。
ヒグマは静かに去っていきました。
もしも大瀬さんが興奮状態で怒る感情のまま大声を出していたら、危険だったかもしれません。
驚くべきは、ただ獲物を狩るだけの凶暴なヒグマだと思ったものが、真剣に「叱る」ということが通じたのです。

なぜ、大瀬さんはヒグマを「怒る」のではなく「叱った」のか。
それは被害が拡大すると、駆除つまりヒグマは殺されてしまうからです。生き物を人間の都合で殺さないために、大瀬さんは人間とヒグマの距離感を作るために「叱った」のです。

まとめ


「叱責」という言葉があります。
この意味を調べてみると『「叱責」は、責任者が下の者の失敗や過ちをきつく非難すること。』とありました。
叱責は感情ではないのです。
「怒る」は、腹をたてて相手に注意する意なので、「優しく怒る」という表現はあり得ません。
次の失敗をしないためにも、子どものより良い未来のためにも、親子ともきちんと叱ってきちんと受け止めていきましょう。

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