『私は愛情の足りない家庭で育ったので、子供にはたくさん愛情を注いであげようと思いました。
…しかし、がんばってスキンシップをしたり褒めたりしてあげてきたのですが、子供は性格が暗く、他人の顔色をうかがう子供になってしまいました。どうすれば子供に愛情を伝えることができるのでしょうか?』
先日、このような相談のメールをいただきました。
確かに、『自分では愛情をいっぱい注いできたつもり』なのに、子供にうまく伝わらないこともありますよね。
では、どのようにすれば親の愛情を子供に伝えられるのでしょうか?
そこで今回は、
『愛情の注ぎ方』
について、お話してみようと思います。
目次
表面的な愛情表現では意味がない!
『自分ではキチンと愛情を注いできたつもりなのに…』
という親御さんはたくさんいます。
しかし、私がまずお伝えしておきたいことは、
『表面的な愛情表現では意味がない』
ということです。
どういうことかというと、たとえば育児書によく書いてあるような、
『スキンシップはたくさんしましょう!』
『たくさん声をかけてあげましょう!』
『子供が話しかけてきたら、家事をしているときでもなるべく手を止めて、『どうしたの?』と話を聞いてあげましょう』
などというようなことをいくら実践しても、それだけではあまり意味がありません。
なぜなら、一番大事な、
『気持ち』
が入っていないことが多いからです。
『愛情は注いできたのに、子供に伝わらない…』
という親御さんの多くは、このミスを犯してしまっています。
この手のタイプの親御さんは、育児書などを読んで、
『こうすれば子供は愛情不足にならない!』
と知り、本に書いてある通りに実践しているだけで、もっとも大切な、
『自然な振る舞い』
ができていません。
『自分が抱きしめてあげたいから、抱きしめる』
『褒めてあげたいから、褒めてあげる』
『話を聞いてあげたいから、話を聞いてあげる』
という、自発的な行動ではないのです。
愛情を注ぐというのは、言い方を変えれば、
『子供が喜んでくれることを、本心からしてあげたくなってしまう』
ということです。
もっと分かりやすく言えば、
『子供が可愛いから、ついつい抱きしめてしまう』
ということであり、
『褒めてあげると喜んでくれるのが嬉しいから、褒めてあげる』
のであり、
『話を聞いてあげたいから、話を聞いてあげる』
ということです。
つまり、すべては『自然な感情』から生まれた行動なのです。
これに対して、子供に愛情を伝えられない親というのは、
『育児書に書いてあったから』
『こうすれば愛情が伝わると思うから』
『子供の成長に良いから』
などというように、
『〇〇すれば、子供のためになるから』
というように、半ば義務感のような感情で抱きしめたり、褒めてあげたりするひとが多いです。
言い換えれば、
『愛情を注がなければならない』
というような感覚です。
しかし、子供というのは鋭い生き物なので、こういった『抱きしめてあげなきゃ!』『褒めてあげなきゃ!』というような表面的な愛情表現が続くと、次第に『愛されていない…』と感じてしまいます。
抱きしめられても、褒められても、どこか嘘くさく、心が通っていないように感じてしまうのです。
これが、『愛情を注いだのに子供に伝わらない』と悩んでいる親御さんが犯してしまっているミスです。
抱きしめる、褒める、かまってあげるというのは、あくまでも、
『そうしてあげたい!』
という素直な感情から生まれる行為であって、
『こうしなければいけないから』
という計算や義務感から生まれるものではありません。
もちろん、『こうしなければいけない』という考えも、元をただせば『子供に愛情を注いで、明るい子になって、幸せになって欲しい』と思う親御さんの愛情から生まれた考えであることは間違いありません。
しかし、それでもやはり、『子供がかわいくて仕方ないから、ついつい抱きしめてしまう』のと、『抱きしめてあげると愛情が伝わると育児書に書いてあったから、抱きしめる』のとでは、子供に伝わる愛情の質が違いすぎるのです。
父親の褒め言葉が、嬉しくない?
ここでちょっと蛇足ですが、私の子供時代のエピソードをひとつご紹介します。
私は子供時代のことをとてもよく覚えていて、兄弟にも驚かれることが多いのですが、それらの思い出のなかにひとつ、
『偽りの愛情』
を感じた経験があったので、ご紹介します。
それは私が小学校一年生のときのことです。
私はそのころチョウチョウの絵を描く事に熱中していて、毎日図鑑の蝶の写真を見ては、割とリアルな蝶の絵を描いていました。
色鉛筆や光る画材(?)を使ってキレイに彩色したりと、かなりこだわって絵を描いていたのを今でも覚えています。
そのころの私は、蝶の絵を描くのが楽しくて楽しくてたまりませんでした。描けば描くほど上手になっていくのも好きだったし、なにより、出来上がった絵を先生や母親、友達に見せると、みんなが口をそろえて『すごい!』と言ってくれたのが嬉しかったのです。
しかし、あるとき新たに描いた絵を父親に見せたときに、事件が起きました。
といっても、絵を否定されたわけではありません。
逆です。
過剰なほど褒めてくれたのです。
『すごいな~! こんな絵を小学一年生で描ける子は他にいないぞ! いや、ほんとすごい!〇〇は天才だな!』
ぐらいに。
その褒め言葉を聞いて、幼い私はどう感じたと思いますか?
喜んだ?
いいえ、違います。
『絵を描くのが嫌になってしまったのです』
なぜなら、父親のほめ方があまりにもうさんくさく、感情がこもっていなかったからです。
たぶん父は、ここでたくさん褒めてあげれば、私が将来、有名な絵かきになったりすることもあるかもしれないと思い、一生懸命に褒めちぎってくれたのでしょう。
しかし、そうした『打算』から生まれた褒め言葉は、子供の耳にはどうにも胡散臭く聞こえてしまい、心に響かないのです。
もちろん、当時の私が『これは本心じゃない』などと分析できるわけではありませんが、なんとなくの感覚で、
『あれ? なんか、違う。…なんか、友達や先生に褒められたときみたいに嬉しくないな。なんか…嫌だな』
と感じたのです。
そのせいというわけではありませんでしたが、それからしばらくして、私は蝶の絵を描くことに飽きてしまい、今ではすっかり絵を描かなくなりました。
このように、『なにか計算や下心があって行われる愛情表現は、子供に見抜かれてしまう』ことが多いのです。
これは何も私だけが鋭い子供であったとか、ひねくれていたとかという問題ではないと思います。
私はかつて保育士として働いていたこともあるのですが、そのときの経験からも、
『子供ほど、大人の本音や感情を直感で見抜く生き物はいない』
と思っています。
一度や二度、ごまかすことはできても、一緒にいる時間が長ければ長いほど、
『本当に愛されているか、大事にされているか、愛さなきゃいけないという義務感で愛されているだけじゃないのか?』
ということを、なんとなく、本能で見抜いてしまうのです。
そして、親の精神状態の影響をモロに受けてしまうのも子供の特徴です。
ベテランの保育士などは、保育園にきた子供の顔を見ただけで、『昨晩、両親が夫婦喧嘩した』ということが分かってしまったりします。
そのくらい、子供というのは感性豊かで、親の機嫌や感情に敏感なのです。
愛情を注げない親の特徴と原因
ところで、子供にうまく愛情を注げない親にはどのような特徴があるのでしょうか?
これは多くの場合、
『親自身も、両親からの愛情に恵まれなかった』
という場合が多いです。
もしくは、コンプレックスが強く、自分に自信がない親御さんも多いです。
自分自身が愛情に恵まれなかったため、子供にどうやって愛情を注げばいいのか、暖かな家庭とはどういうものなのかが分からず、ついつい表面的な愛情表現に頼ってしまうのです。
このような親御さんには、大体似たようなパターンがあります。
〇自分自身が愛情の乏しい家庭で育つ。
↓
〇『自分の子供にだけはこんな思いはさせたくない!』と、暖かい家庭を作らなきゃと決意する。
↓
〇育児書を読みふけったりして、『正しい育児』をしようとしてしまう
↓
〇表面的な愛情表現ばかりが増えてしまい、育児が義務化してしまう。
↓
〇『理想の家庭』を追い求めすぎるあまり、子供が言うことを聞かないとストレスを感じてしまう。
↓
〇イライラが爆発して子供に当たったり、自信をなくして育児が嫌になる。
↓
〇そんな親の姿を見て、子供が不安になる。
↓
〇子供の精神に悪影響が出る。(暗くなる、暴れっぽくなる、イタズラが止まらなくなる、など)
全員というわけではありませんが、『愛情を注がなきゃ!』と過剰に思ってしまっている親御さんの多くは、こういったパターンに陥りがちです。
私は育児の専門家ではありませんが、私自身も色々と問題のある家庭で育ち、自身の劣等感を克服するために心の研究をしている人間ですので、『今、こういうことに悩んでいるんです…』と聞いただけで、
『あなた、こういう家庭で育ちましたね?』
『こういったトラウマや、考えを持っていますね?』
と、分かってしまうことがあります。
『子供への愛所の注ぎ方が分からない…』
と悩む親御さんの多くは、大体このように『理想の家庭』と作ろうとしてしまって、失敗してしまうのです。
『理想の家庭を作らなければ!』『子育てに失敗しないようにしなきゃ!』と思うあまり、子供が言うことを聞かなかったり、わがままを言ったり、自分を慕ってくれないと、『このままじゃ失敗してしまう!』と怖くなってしまうのです。
本当の愛情の注ぎ方とは?
最初に述べたように、本当の愛情というのは、
『自分の心から、自然と湧き上がってくる愛情』
のことです。
子供が可愛いから、抱きしめたくなる。
子供の喜んだ顔が見たいから、褒めてあげる。
子供を無視するのはかわいそうだから、忙しくても話を聞いてあげる。
こういった『自然な感情』こそが愛情です。
『スキンシップをたくさんすれば、子供に良い影響がある』
と考えて抱きしめるのは、本当の愛情ではありません。
もちろん、『子供に健全に育って欲しい』と思う気持ちも愛情ではあるのですが、『抱きしめてあげたいから、抱きしめる』という素直なスキンシップに比べると、子供は愛情を感じにくいのです。
子供は親の表情を見ています。
抱きしめられたとき、お母さんやお父さんが本当に愛おしそうに笑っているか、嬉しそうな笑顔を浮かべているか。
それと、義務感や『面倒くさい…』という感情を隠して笑顔を取り繕っているのか。
子供は敏感にそれらを見抜きます。
そして、義務感で抱きしめられた子は、しだいに『なんか、違うなぁ』と気づき、お父さんやお母さんと心が触れ合っていないことにうすうす感づいてきてしまい、寂しさや不安を感じてしまうのです。
大事なのは親の自尊心や精神状態
つまり、大切なのは『親御さんが、自然に子供を愛すること』なのです。
多くの『自然に子供に愛情を注げる親』が、育児書をまったく読まないのはそのためです。
何もせずとも勝手に子供を愛せるからです。
『でも、それが出来ないから困ってるんです…』
というひともいるかもしれません。
実は、それにはちゃんと理由があります。
それは、
『親自身が、自分のことを嫌い』
というパターンです。
子供は自分の分身ですから、自分が嫌いなひとは、子供のことも心の底で嫌ってしまったりします。
嫌うとまで行かなくても、好きになりきれなかったりします。
よく、引きこもりなど劣等感の強いひとが家族にあたっているところを見たことがあると思いますが、あれと同じです。
自分自身が嫌いなひとは、自分に近い人間を攻撃することで、自分自信への怒りや嫌悪感を発散しようとしてしまうのです。
虐待などはまさにそうです。
もちろん、『愛情を注いであげたい』と思っている親御さんは、虐待する親などよりははるかに子供を想ってあげられているのですが、それでもどこか自然な愛情ではないことが多いです。
そもそも、
『愛さなきゃいけない』
と、思ってしまっている時点で、自然な愛情ではありません。
このように、子供を愛するためには、親自身が自分を好きになり、大切に思えるようにならなければいけないのです。
これを『自尊心』と言います。
自尊心の低い親は、なにをするにも自信がなく、人付き合いも苦手で、自分の子供に対してもどこかよそよそしい、表面的な親子関係になってしまいがちです。
一番大事なのは、親自身が自分の心を愛情と自信で満たし、自尊心を高めることです。
昔から、
『自分を大事にできない人間は、他人も大事にできない』
と言われていますが、まさにその通りです。
自尊心を高める方法
『でも、自分に自信を持つなんて難しくてできない!』
と、思われる方も多いと思います。
確かに、幼いころの家庭環境やコンプレックスなどで自信をなくしてしまったひとが、自信満々に生きている人のように生きるのは難しいと思うかもしれません。
しかし、自分に自信をつけ、自尊心を高めることは実はそれほど難しくありません。
私は長年、『劣等感の克服方法』を研究してきたので、これは断言できます。
自尊心を高める方法はたくさんありますが、この記事ではそのなかのひとつをご紹介してみたいと思います。
それは、
『日記をつけること』
です。
実は、日記には高い精神浄化作用があります。
簡単に言えば、
『ネガティブな感情を抑え、ポジティブな感情を増幅させる効果』
があります。
アインシュタインの言葉に、
『私の知る限りにおいて、成功者の共通点は日誌だった』
というものがあります。
成功しているひとはみんな日記をつけている。
つまり、それだけ日記を書く事には精神に良い効果があるということです。
これはありとあらゆる成功者が同じように説明していますし、私自身も効果を実感しているので、本当にオススメです。
ただし、日記をつけると言っても、ただ闇雲につければ良いというものではありません。
日記の付け方にはコツがあります。
それは、『前向きな言葉』で日記を書くことです。
『今日は〇〇を失敗した…やっぱり私はダメだ』
と、書いてしまうと、自分の心は文字からの暗示を受けて、どんどん暗くなってしまいます。
同じことを書くにしても、
『今日は〇〇がちょっと上手くいかなかった。だから、明日はこうやってみよう。そうすれば次は成功するに違いない』
と、書くのです。
また、その日あった楽しかったこと、嬉しかったこともたくさん書くようにしましょう。
これを繰り返していくことにより、日常のなかで嬉しいことや幸せなこと、また、自分自身の良いところに気づきやすくなり、少しずつ少しずつ、自尊心が高まっていきます。
自尊心が高まっていけば、自然と子供を愛せるようになり、余裕を持って育児ができるようになります。
決して義務感ではなく、『抱きしめてあげたいから、抱きしめてあげる』ということができるようになり、自分を愛せるようになれば、子供と触れ合っていても自然と笑顔が溢れてくるようになります。
そうなれば、自然と『理想の家庭』に近づいていきます。
ただリラックスして、家族みんなが楽しく過ごしているだけなのに、気が付くと『理想の家庭』になっているのです。
『スキンシップしなきゃ!』『抱きしめてあげなきゃ!』などという義務感も消え去っていきます。
子供に愛情を注ぐためには、まず自分に愛情を注ぐ。
このことをぜひ覚えておいてください。
まとめ
いかがでしたか?
『子供に愛情を注ぐ方法』
というお話をしてみました。
愛情の少ない家庭で育ったり、自分に自身がないと、どうしても育児書に書かれているようなうわべだけのテクニックに頼ってしまいがちになってしまいます。
でも、人間と人間のコミュニケーションに、マニュアルなんてものはありません。
親子の触れ合いならばなおさらです。
安易な『答え』を求めてはいけないのです。
人間関係に正解を求めてはいけないのです。
自分のなかの自尊心を高めて、自然と外への愛情が沸くようになれば、育児だって人間関係だってうまくいくようになっていきます。
いつもニコニコ笑っているママと、いつも余裕がなくピリピリしたママ。
どちらが子供を笑顔にできるかなんて、考えなくても分かると思います。
ぜひ、参考にしてみてください。
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